日本語はパズル感覚で読み書きするもの!わかりやすい文章で社会を明確に・快適にしたい
株式会社ネイビープロジェクトは「わかりやすい文章」を制作・提供する編集プロダクションです。2015年10月21日からさまざまな企業や団体の支援で忙しくしてきたものの、自社について紹介・発信する機会がほぼなかったかと考えています。ネイビープロジェクトがどのような企業なのかを多くの人に知ってもらうべく、文章の「わかりやすさ」になぜこだわるのかをコンセプトに、代表の田中にインタビューをしてみました。
日本語が苦手だった学生時代の経験が、制作ノウハウにつながる
――田中さんって、文の書き方とか言葉の選び方について細かいですけど、学生の頃から国語好きだったんですか?
田中:いや、そんなことはないよ。実は、学生の頃は国語が苦手で。字面は読めるんだけど、意味がまったく頭に入ってこない感じだったね。
――今の細かい田中さんを知っている身としては、嘘にしか思えないです。
田中:嘘みたいでしょ。むしろ英語の方が理解できたのよ。代々木ゼミナールのサテライン授業を高校時代に受けていて、講師の富田一彦さんの教え方がわかりやすくて。英語は動詞を中心にしたパズルみたいなもので、その型を意識して文を読んだり書いたりしなさいっていう教えが自分に合ったというか。暗記を迫るようなスタイルではなく、考える力が付くスタイルがよかった。
――“英語はパズル”といわれると、おもしろくて勉強が楽しくなりそうですね。
田中:日本語も“パズル”の感覚で考えるといいと、実は私は思っていて。大学生のときに『中学生からの作文技術』(本多勝一、朝日新聞出版)を読んで、「この考え方を使えば、日本語もパズルとして解釈できる!」と悟ったわけ。本多さんのメソッドは論理的だから普遍性や汎用性が高いと感じたんだよね。
――普遍性・汎用性が高いから、プロのライターになってからも重要視しているんですね。
田中:そうだね。本多さんのメソッドに従って論理的な文章を書けば、誰が読んでも理解しやすいし、誰にでも正確に意味を伝えられるでしょ。そのようなポリシーで仕事をして、昔の私のように国語が苦手な人にも理解しやすい文章を提供したい。そして社会全体をわかりやすくしたいと思っているんだよね。
客観性と論理性は、クライアントを守る
田中:「それってあなたの感想ですよね?」という言葉、知っている?
――ひろゆき(西村博之)さんの?
田中:そう。ネットでいまだにこすられているけど、あの言葉が印象に残っていて。根拠や客観性が乏しいと「あなたの感想では?」とつっこまれそうで、ライターになってからあの言葉にずっとおびえている部分があるんだよね。
――たしかに、いわれたらショックですよね。
田中:ネイビープロジェクトで制作する文章の多くが、企業や自治体などがビジネス文章として使うものでしょ。冗長さや誤読する心配がなく、論理的で読みやすいのは最低条件だと思っている。最近は読者も目が肥えているから、根拠や客観性が乏しい文章を納品したら、依頼主へのクレームにつながりかねない点にも配慮しているのよ。
コンピュータにもわかりやすいから、SEOが期待できる
――「根拠と客観性」はなんとなくイメージできるんですけど、文章をわかりやすく書く上でのコツってなんかあるんですか?
田中:本多さんの本でも軽く触れられているんだけど、日本語は述語を中心にした言語で、どの述語にどの修飾語がかかるかを考えながら書くのが「わかりやすさ」につながるんだよ。だからコツは、述語に着目することといってもいいかもね。
――それ、“英語はパズル”と同じですね。
田中:そう。Webに掲載する原稿では特に、検索されて上位にくるためにSEOを意識する場合があるでしょ。コンピュータは自立語の一部しか認識しないから、自立語が的確に並べられて、認識の邪魔になるような無駄がなくて端的にまとめられたのが「いい文章」と考えられる。そのとき“パズル”の感覚で言葉を当てはめていければ、コンピュータにも理解しやすい・SEOで高評価をもらえる可能性が高い文章が書けるってわけよ。
――田中さんが細かく指摘してくるのも、理由があったんですね。
田中:せっかく書くなら、人間にもわかりやすくて、SEOでも結果を出したいからね。ほかにも、ネイビープロジェクトではみんなが本多さんのメソッドに従って考えているから、誰が担当してもクオリティが安定するし、校正をしたときも調整理由の理解が早い点も大きいかな。
書き方が決まっている分、執筆時間が短くできて、ほかのところに手間暇がかけられる点もいいよね。情報ソースや参照元を明確にして残すのを社内ルールにしているのも、執筆を効率化して余力を生んでいるからできているんだと思う。客観性が担保できて調べ直しが発生しない・校閲校正が容易になると、よろこばれているサービスなので続けていきたいね。
社会全体の日本語力をもっと上げる
――今後について、今の段階でほかに考えていることはありますか?
田中:今までどおり、わかりやすい文章を制作していく仕事はやっていきたいと思っている。デザイン事務所やコンサルティング会社のような、書くこと以外のプロの皆さんと連携を深めていきたいね。
あとは自分が田舎の出だから、地方創生の手伝いができたらうれしいかな。すでに取引がある地方企業さんを見ていると、人手やノウハウが不足しているから、地域の中小企業さんとのつながりも増やしていきたい。
さらに、読み手のリテラシーを上げる事業もしていきたいと思っているかな。AIが出てきて生産性が上がっているのは事実だけど、肝心の読み手の理解力が低ければ意味がないと思っていて。人がある程度読めるレベルの文章はパッと作れても、現段階では「情報の正確性は担保されていません」で、人による調整が不可欠な点も気になる。だからAIが作った文章を正しく理解したり調整したりできる力を養う事業とかは興味があるね。
冒頭でも伝えたとおり、論理的で「わかりやすい文章」をさまざまな形で提供していって、社会全体を明確に・快適に…つまり書き手と読み手の日本語力を上げていくのが今後の目標かな。
インタビュイー:田中利知
1988年 山口県生まれ
群馬大学 社会情報学部 情報行動学科 卒業
株式会社ダスキン・株式会社オスカープロモーションで営業職を経験。
後者では、コンテストやイベントの企画・運営に携わりながら、
SNSを使った広告の企画・運営、雑誌や広告へのモデルキャスティングに取り組む。
2013年にキャスティングディレクターやライターとしてフリーでの活動を開始。
2015年に株式会社ネイビープロジェクトを設立。
執筆・取材:神津総一郎
1994年 大阪府生まれ
群馬大学 社会情報学部 情報行動学科 卒業
新卒で入社したIT企業を辞め、Webライターに転身。
現在はフリーランスとして活動し、SEO記事を中心に執筆している。